グラン・ブーケ

特別支援に関する社会的課題の探求プロジェクト

 難しいタイトルになってしまい、すいません。長文おつきあいいただける方は、お読みいただけましたら幸いです。

 会員さんからの個別のご相談をいただくことが増えてきました。困ったときや迷ったときにグランブーケを思い出してくださることがうれしいです。ただいま、2つの案件について、特別支援に関する社会的課題として捉え、どのように問題の本質を追求していくか、どうやって問題を解決していくかということを検討しています。

一つは、運動会でのピストルの音を不安に思う聴覚過敏のお子さんの存在です。朝日新聞の記事に、聴覚過敏の高校生の願いで運動会のピストルが笛に変わったという記事がありました。聴覚過敏のメカニズムは、音の強弱のシステムがうまく働かない、音を情報処理する脳の機能的な問題などいくつもありますが、音の聞き分けの問題については発達しょうがい児によくみられる注意の問題と重なるところがあるのでご紹介します。たとえば人は雑踏のパーティの中で話しかけられても、自分に必要な部分の音声を聞き分けることができますこのことをカクテルパーティー効果といいます。ところが、いわゆる聴覚に過敏性のある人は、膨大な聴覚刺激から自分に必要な音を聞き分け、必要ない刺激をスルーすることが難しいとされています。そうなると、耳にはさまざまな音が洪水のように流れ混んできてしまいます。

聴覚以外にも、発達しょうがい児は、たとえば「耳から指示を入れるのが苦手」「目で沢山のものから必要なものを見抜くのに時間がかかる」「目で見たとおりに手を動かすのが遅い」など、外部からの情報の入力、処理、出力どこかに特徴的な姿が見られることが多いのです。その子に合った支援を考える際にはどういった特徴がどういうところでどのように見られるか正しく見たてることが重要となります。

運動会のピストルの件に戻ります。会員さんからピストルで困っているお子さんがいるという情報が寄せられ、緊急のアンケートを行いました。

19名の方から回答をいただき、2名の方が現在困っている、3名の方が過去に困っていたという結果でした。この結果をもって北区議の駒崎美紀先生にご相談させていただきました。現在は、駒崎先生と相談しながら、この課題をどのように支援のニーズの形としてまとめていくか、リサーチを進めています。並行して、アンケートで現在進行形で「困っている」と回答された会員さんと連絡をとり、お子さんご本人の希望に沿ったピストルに代わる合理的配慮を学校側にお願いしていく方向で動いています。結果がまとまりましたら、あたらめて総括をご報告させていただきます。

2つ目は、都内から他県に転居を繰り返された会員さんからのご相談がありました。現在の特別支援の仕組みでは、ある都道府県内で特別支援を受けていた児童が都道府県外に転居した場合、特別支援の内容を引き継ぐ正式な仕組みがありません。そのため、引っ越しをするたびに、その地区の特別支援に関する情報収集からはじまり、子どもにとってベストな支援の枠組みを再構築することが保護者の肩に一手にかかっているのが実情です。また、都道府県によって特別支援の仕組み、内容、水準等さまざまなことが異なり、平準化されていません。

以前住んでいた米国でニューヨーク州からテキサス州に転居したことがありました。アメリカではIDEA(障害のある個人教育法)という法律によって転居に関わらずどこにいても特別支援を保障してくれる仕組みがあったため、転居先のテキサスでニューヨーク州が作った個別支援計画を見せると、「OK!」の一言で行政主導の支援の枠組みを用意してくれました。

特別支援を必要としている児童のベストな支援の枠組みを、当該児童生徒さえも含めて皆で考えていく形、それは理想ではなくわたし自身が米国で体験した現実のものでした。まずは、特別支援をめぐる日本の法令や制度がどういう仕組みになっているか、そういったところから学びをはじめて、社会的な課題はどこにあるのか探求していきたいと思っています。

 当面は上記2つのプロジェクトについて学習と実践(行政、学校、社会への働きかけ)を積んでいきたいと考えています。以上、特別支援に関する社会的課題を一緒に考えてみたいという会員の方がいらっしゃいましたら、渡辺まで個人メッセージ(会員登録2の方法にメールアドレスの記載がありますのでご確認ください)をお願いいたします。ご参加希望の方がいらっしゃれば、月に1度程度の頻度でプロジェクトの学習会を開催いたします。

グランブーケ 渡辺 香織

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